経営者の覚悟

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honda (7)経営者にはインテリにはない腹をくくるたくましさが必要だ。
宗一郎には、見栄っ張りのインテリのようなところがなく、腹をくくる、いざというときには一からやり直す、というたくましさがあった。
会社設立五年後の巨額な投資について、
「その時点だけのそろばんなら無謀だった。しかし、三年先、五年先、10年先のためには絶対必要だった。かりにホンダが倒産して私たちが去っても、従業員とその設備は、日本のために生き続けるのだから、腹をくくった」
危機に強いということは、志、気概をもつことと同じに思われる。
案の定、それからの販売不振で手形の決済の見通しが立たなくなったとき、藤沢武夫(当時専務のち副社長)が宗一郎に、
「あんたには自然に人をひきつける何かがあると思う。だからいよいよ会社がダメになったら、あんたが新興宗教の教祖になればいい。これは儲かるぞ」
といい、彼は彼で、
「それなら俺が教義を考えないといかんな」
と応じている。
とある居酒屋で飲み交わしながらの話である。
まさか宗教のベンチャーにはならなかったと思うが、彼には、たしかに奇跡を起こすことを信じさせるようなカリスマ性とリスクを恐れないベンチャーマインドがあった。
100%安全という計算と見通しがなければ事を起こすことができない人は起業家には向いていない。真の企業家でもありえない。
自身、アイルトン・セナ、中島悟と組み、FIレースの総監督として修羅場で「危機」を呼吸して生きた桜井淑敏(昭和六三年にはヱ(戦一五勝というふつうありえない勝利をホンダにもたらした)が、御大についてしみじみ語っている。
「技術で宗一郎氏に追いつけたとしても、絶対にかなわないと思うことがある。それは逆境に陥ったときに、そこから這い上がる力だ」
これらは、経営者宗一郎の異常な性格なのか。
彼には経営者として、「無謀」や危機を乗り越える、
「なんとしてでも夢を」という熱い希望、
「このままではダメだ」という強烈な危機感、
「なんとかなる」というオプティミズム、
「なんとかする」という固い意志、
「なんとかできる」という強い自信、
 が、常に心の奥底にあり、それらは、そのような実績を重ねることによって常人を超える信念となっていた。